この問いに対して、僕はずっと引っかかっています。
もちろん、公務員には守るべき一線があります。利害関係があってはいけない。職務に支障が出てもいけない。公務の信用を傷つけてもいけない。そこは、僕も否定しません。
でもその一方で、物価は上がる。生活コストは上がる。将来への不安は増える。そんな時代に、「副業はダメです」とだけ言い切る制度は、本当にそれでいいのか。僕はそこに、かなり大きな矛盾を感じています。
このコラムは、制度の説明ではありません。制度をどう受け止めるか、その話です。
✅ 僕は「副業禁止を全部なくせ」と言いたいわけじゃない
最初にはっきり書いておきます。
僕は、公務員の副業を完全自由にしろ、と言いたいわけではありません。
公務員には、公務員の重さがあります。税金で給料を受け取り、行政サービスや公権力の一端を担う立場にいる以上、一般の会社員とまったく同じルールでいいとは思いません。
たとえば、
- 自分の職務と関係する企業から利益を得る
- 勤務に支障が出るほど疲労する
- 役職や情報を使って私的利益を得る
- 市民から見て「公正じゃない」と疑われる
こういうことは、やっぱり止めなければいけないと思います。
だから僕は、「副業禁止は全部おかしい」と言うつもりはありません。
ただ、問題はそこじゃない。“全部まとめて禁止寄りにし続ける発想”が、今の時代に合っているのかということです。
✅ 生活防衛の時代に、「副業禁止」だけが昔のまま残っている
ここが、僕の一番の違和感です。
日本はこの数年、生活コストがじわじわ、でも確実に重くなっています。
食費、住居費、光熱費、通信費、教育費。何を取っても、昔より「生活防衛」の重みが増しています。
そんな中で、公務員だけに「副業は基本ダメです」と言い続ける。しかも、その説明が“公務員だから”で止まる。僕はそこに、時代とのズレを感じます。
✅ 制度の側も、実はもう「昔のままでは無理だ」と認め始めている
ここが大事です。
制度の側も、本音では「このままでいい」と思っていないはずです。
実際、人事院は2026年4月1日から、国家公務員の自営兼業制度を見直し、職員の知識・技能をいかした事業や、社会貢献に資する事業を承認可能にしました。
これは小さな変更ではありません。
今までの公務員副業の議論は、不動産、太陽光、家業継承みたいな「財産や家の事情」に寄ったものが中心でした。そこに今回、知識や技能を活かす副業や、社会に役立つ活動を制度の中へ入れ始めたわけです。
僕はこれを、「制度がようやく現実に追いつこうとし始めたサイン」だと思っています。
逆に言えば、それまではやっぱり、かなり現実からズレていたということです。
✅ 問題は「副業」ではなく、「公務を壊す副業」だったはずだ
ここを履き違えると、議論がおかしくなります。
本来、止めるべきなのは「副業」そのものではなく、公務を壊す副業のはずです。
たとえば、
- 職務と癒着する副業
- 公務時間や公務情報を使う副業
- 疲労で職務に支障を出す副業
- 公正性や信頼性を壊す副業
こういうものは、当然止めるべきです。
でも逆に、
- 知識や技能を活かす
- 公務とは利害関係がない
- 勤務にも支障がない
- 社会にとってもプラスがある
そんな活動まで、一律に“危ないもの”として扱うのは、僕には少し乱暴に見えます。
しかも、その乱暴さのツケを払うのは、現場の人です。
✅ 「安定しているんだから我慢しろ」は、もう雑すぎる
公務員の副業を語るとき、よく出てくる空気があります。
「公務員は安定してるんだから、副業なんてしなくていいだろ」
僕は、この言い方がいちばん危ないと思っています。
なぜなら、“安定”という言葉が、あまりにも雑に使われているからです。
安定とは、ただ毎月給料が出ることだけじゃない。将来への安心、家計の余白、急な出費への耐性、家族を守れる感覚、そういうものも含めて初めて「安定」です。
でも今は、その余白がどんどん薄くなっています。
だから僕は、「公務員だから安定してる」という一言で、副業の必要性を切り捨てるのは、かなり雑だと思っています。
✅ 本当に危ないのは、“隠れてやるしかない制度”の方だと思う
ここは、次のコラムにもつながる話です。
制度が現実に合っていないと、人はどうなるか。
正面から相談せず、隠れてやるしかなくなります。
家族名義、名義だけ変更、アカウント分け、住民税テクニック、SNSの鍵運用――。こういう“抜け道文化”が強くなるのは、個人のモラルだけの問題じゃありません。
制度が現実とズレすぎているとき、人は制度を正面から使わなくなる。
僕はそこが、本当に危ないと思っています。
ルールが厳しいことそのものより、ルールが「相談しても無理」と思わせることの方が、長い目で見るとよほど危険です。
✅ じゃあ、どうあるべきなのか
僕は、公務員副業の制度は次の方向へ進むべきだと思っています。
- 一律禁止ではなく、「何が危ないか」で線を引く
- 知識・技能・社会貢献型は、もっと透明に許可しやすくする
- 相談した人が損をしにくい制度にする
- 自治体・府省ごとの差を縮め、分かりやすくする
つまり、「副業を解禁するか、禁止するか」の二択じゃないんです。
公務を守りながら、生活防衛と自己実現をどう両立させるか。本当に考えるべきなのは、そこだと思っています。
✅ このコラムの結論
「副業禁止」は、一定の正義を持っています。
でもその正義は、時代の変化に合わせて更新されなければいけません。
物価が上がり、生活不安が増え、働き方が多様化しているのに、ルールだけが昔のまま止まっているなら、その正義はだんだん現実を守れなくなります。
僕は、公務員副業の議論で本当に必要なのは、「禁止か自由化か」ではなく、「何を守るために、どこまで許すのか」を正面から考え直すことだと思っています。
内部リンク(次に読む)
編集後記
僕はこのテーマを、ただの制度論としては見ていません。
これはたぶん、「この時代に、どうやって人は安心をつくるのか」という話です。
公務員という仕事の信用を守ることは大事です。でも同時に、その仕事に就いている人の生活や将来も守られなければいけない。
その両方をどう成立させるか。そこを考えない限り、「副業禁止」は正義の言葉でありながら、現場では苦しさとして残り続ける。僕はそう思っています。
✅ 参考(公式情報)
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※公務員の方は副業に制限がある場合があります。始める前に所属先の規程・許可要件を確認してください。
免責(大事なので短く)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。兼業の可否は、所属先の規程・内規、職務内容、任命権者や人事担当の判断で変わります。必ず所属先の人事・服務担当へ確認してください。



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