自由を守るために、あえて会社の外壁を借りる。
フリーで食っていくと決めたのに、今さらバイトか。
そう思う気持ちは、よくわかる。
個人事業とか副業って、どうしても「自分の足で立つこと」に価値を置きやすい。
誰にも縛られない。雇われない。好きな時間に動く。
そういう自由に救われる時期も、たしかにある。
でも、40代からの資産防衛で本当に怖いのは、プライドが少し傷つくことじゃない。
全部を自分ひとりで抱え込んだまま、ある日まとめて崩れることだ。
だから今回は、ちょっと嫌な言い方をすると、会社の制度を一部だけ借りる話をしたい。
フルで会社員に戻るとか、自分の商いを捨てるとか、そういう話じゃない。
むしろ、自分の商いを守るために、厚生年金や健康保険という「外壁」を一部だけ借りる発想だ。
個人事業一本は、自由だけど裸足に近い
個人事業や副業一本の良さはある。
動きが速い。決断も早い。誰かの顔色で全部が決まるわけでもない。
でもその代わり、社会保険まわりは薄くなりやすい。
国民年金は自分で払う。
国民健康保険も自分で払う。
売上が落ちた月も、自分で持つ。病気をした時も、自分で止まる。
ここが、じわじわ効いてくる。
若い頃は勢いで押し切れることもある。
でも40代以降は、勢いだけで全部を回す設計がだんだん苦しくなる。
自由って、気持ちいい。
ただ、自由だけだと守りが薄い。
だから「守りだけ一部借りる」という発想は、思っているより悪くない。
厚生年金は「自分だけで積む」のとは違う
厚生年金の強さって、何よりそこだと思う。
国民年金は、基本的に自分で払うしかない。
一方で厚生年金は、給与から引かれる代わりに、会社側も負担する。
つまり、自分だけで年金の土台を作るより、雇用の仕組みごと使って二階建てに寄せることができる。
ここを「雇われるなんて負けだ」で切ってしまうのは、もったいない。
40代から先は、見栄より実利で考えたほうが強い。
全部を一本で勝とうとすると、折れた時に痛い。
少しでも外壁があると、崩れ方が変わる。
週20時間前後が話題になるのは、入口になりやすいからだ
最近、「週20時間くらいで社保に入れる働き方」が話題になることがある。
実際には、週の所定労働時間が20時間以上、学生でないこと、所定内賃金が月額8.8万円以上など、いくつか条件がある。勤務先側の条件もあるので、求人票と会社説明はちゃんと確認したほうがいい。 :contentReference[oaicite:1]{index=1}
でも、ここで大事なのは細かい暗記ではない。
フルタイムじゃなくても、会社の保険の土台に乗れる働き方があるということだ。
この発想が持てると、世界の見え方が少し変わる。
- 週2〜3日だけ固定シフトに入る
- 昼だけ現場に入って、夜は自分の仕事をやる
- 収入の全部ではなく、守りの部分だけ会社の仕組みを借りる
こういう組み立てが、現実的な選択肢として見えてくる。
社保つき現場に入るメリットは、年金だけじゃない
1. 厚生年金の上乗せが狙える
まずはここ。
国民年金だけに頼るより、厚生年金が少しでも乗るほうが、老後の土台はやっぱり厚くなる。
たった数年で人生がひっくり返るわけじゃない。
でも、40代からの再建はホームランじゃなくて、失点を減らす戦いだ。
その意味で、少しでも二階建てに寄せる価値はある。
2. 健康保険の守りが変わる
社保つき現場の意味は、年金だけじゃない。
健康保険の面でも違いが出る。
たとえば、健康保険には傷病手当金がある。業務外の病気やケガで仕事に就けず、連続する3日間を含み4日以上休んだ場合など、一定の要件を満たせば対象になる。自営業一本の人には、この差がかなり大きい。 :contentReference[oaicite:2]{index=2}
「まだ動けるから大丈夫」と思っている時期ほど、身体のトラブルは怖い。
体を使う仕事をしている人ほど、この守りは軽く見ないほうがいい。
3. 収入の土台が少し読める
個人事業や副業は波がある。
いい月もあれば、止まる月もある。
その中で、週2〜3日でも固定収入があると、気持ちはかなり違う。
「今月ゼロかもしれない」という不安が少しでも薄まると、ブログでも配達でも、判断が荒れにくくなる。
ただし、社保つき現場も万能ではない
ここはきれいごとで終わらせたくない。
1. 時間の自由は減る
個人事業だけなら、自分で時間を切りやすい。
でも固定シフトが入ると、その自由は当然削られる。
2. 体力を食う
昼に現場、夜に配達、深夜にブログ。
これを欲張りすぎると、全部が崩れる。
制度を取りに行って体を壊したら、さすがに意味がない。
3. 本業の伸びしろを削ることもある
ブログが伸び始めている時期、自分の商いの勝ち筋が見え始めている時期なら、固定シフトが逆に足を引っ張ることもある。
つまり、社保つき現場は万能薬じゃない。
でも、選択肢として持っておく価値はある。
そこが大事だと思う。
向いている仕事は、かっこいい仕事じゃなくて「組み合わせやすい仕事」だ
じゃあ何が候補になるか。
地域差はあるけど、一般的にはこんな業種が入りやすい。
- 物流倉庫
- スーパーや量販店の品出し
- 警備
- 清掃
- 介護補助
- 工場やバックヤード作業
共通しているのは、未経験でも入りやすいことと、シフトで時間を区切りやすいことだ。
40代からの再建で大事なのは、肩書きじゃない。
自分の本業と両立しながら、制度の土台を借りられるかどうかだ。
結局これは「敗北」なのか
僕は、敗北じゃないと思う。
全部を自分で回したい気持ちはわかる。
フリーで勝ちたい。自分の力だけでやりたい。
その気持ち自体は悪くない。
でも40代からの再建は、理想論だけでは続かない。
家賃もある。家族もいる。身体にも限界がある。
その中で、会社の制度を一部だけ借りながら、自分の商いを守る。
これは後退じゃない。
むしろ、かなり現実的で、大人の判断だと思う。
一本で勝つより、二階建てで倒れにくくする。
40代以降は、その発想のほうが強い場面が多い。
この回の結論
今回の結論はシンプルだ。
雇われることが負けなんじゃない。自分の商いを守るために、会社の制度を借りるという選択肢もある。
国の制度で止血する。
証券で腐らせない。
仕事で自走する。
その途中にあるのが、今回の「社保つき現場」だ。
止血と自走の間をつなぐ、地味だけど効く外壁だと思う。
全部を一気に変えなくていい。
でも、「自分一人で全部背負うしかない」と思い込まないほうが、40代からの後半戦は少し楽になる。
【前の記事】年金に頼れないなら、自分で作るしかない。40代から始める資産防衛の実戦
【前回の記事】1円も払えない時に何をするか。全額免除は“敗北”ではなく防衛線だ
【次の記事】国民年金だけでは足りない。付加年金は本当に使えるのかを冷静に考える
編集後記
たぶん、この話は好き嫌いが分かれる。
「雇われるなんて負けだ」と思う人もいるだろうし、「副業をやるなら全部自分で背負うべきだ」と感じる人もいると思う。
でも僕は、40代からの再建って、もっと現実的でいいと思っている。
見栄で一本足打法を続けるより、借りられる仕組みは借りて、そのうえで自分の商いを伸ばしたほうが、結果として長く戦える。
自由は大事だ。
でも、自由だけだと守りが薄い。
その弱さを少しでも補うために、社保つき現場を一部だけ使う。
これは逃げじゃなくて、かなり知恵のあるやり方だと思う。


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